今日も元気です2

食と自然が豊かな釧路で暮らす日常 今、何がしたいですか?

不思議な人たち


教えることそのものは苦じゃないし、最初はずーっと教えていたんですが、でも何度繰り返し教えても、説明してもちゃんとできるようになってくれないんです。普通なら知っているはずのことも知らないし。だからいつも怒ってたし、ずっとイライラしてました。なんでこんなこともできないんだろうって頭に来るばっかりで、自分の料理にちっとも集中できない。それでどうにもならなくなって、皿洗いから仕込みから、全部自分でやってしまうようになったんです。それなら怒らなくてすむから。最悪ですよね。

開店から1年5か月でミシュランの三ッ星を獲得したシェフ米田肇の評伝、石川拓治著「天才シェフの絶対温度」(単行本『三つ星レストランの作り方 嚆矢の天才シェフ・米田肇の物語』改題)の終盤に出てくる、米田シェフのレストランオープン直後の心境を吐露した部分

もちろん、米田シェフの求める「ちゃんとできる」のレベルが常人の想像を超えているだろうことは、この本を開いてすぐからそこらじゅうに記述されているので容易に理解できるのです

空手をやれば格闘家として、絵を描けば芸術家として周囲から評価されてしまうほどの高みを極めてしまう米田肇も、料理学校を出てレストランに勤め始めの1年半ぐらいは何をやっていいか分からず厨房でボーっと突っ立ったままで邪魔者扱いされたというエピソード
結局その場での「ルール」を理解していなかったことに気付き、いったんルールがわかってしまえば程無くして超人的な高みに達することになるのだけど

私のような凡人からすると、特殊な才能を持ったひとが常に理想を目指して尋常ならざる努力を欠かすことなく日々積み重ねる様子を読書中にずっと突き付けられている感じです(笑)
著者である石川拓治の筆力、特に料理やサーヴィスの重要なポイントを伝える記述、表現が的確で素晴らしく、最後まで一気に読ませてくれました
    
「天才シェフの絶対温度」を読んでいて思い出したのが上の2冊
左は17年前、右は25年前に出版された当時に話題になって読んだものなのだけれど、フツーの人が当たり前にできることが何故かできない「なんか変わった感じ」の発達障害を持つ人たちのことを書いたノンフィクション
現在の専門的な立場からの評価はともかく、読み物としてどちらもとても面白いので、未読の方にはぜひ一読をおすすめします、特に「僕の妻はエイリアン」を
     
「僕の妻はエイリアン」夫まえがき p.5より転載

さらに引用すると「実は今や普通学級の子どもの6パーセントが何らかの発達障害を持っていると考えられている(文部科学省調べ)」(2005年出版当時)

だから「なんか変わった感じ」の人は普通に身近にいるということなります
少なくとも馬蹄腎を背負っている人(0.25%)よりは遥かに多い
    
話はいきなりTV番組に飛んでしまって、その発達障害の高機能自閉症の女性アストリッドが登場する海外ドラマ(フランス)がとても面白い(興味深い)のです
もちろん演技なのだけれど、このドラマを観ていると自閉症のひとの「なんか変わった感じ」の由来を少しは理解できるような気がしてきます